永見隆幸に聴く 新型コロナ・ウイルス COVID-19 [永見隆幸先生information]
新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症の現状について、永見隆幸先生に是非お聴きしたいという声が、再び多く寄せられています。以前のインタヴューに加筆して、Q&A形式に纏めてみました。
永見隆幸先生とメリー・アーティスツ・カンパニーのミュージカル・コメディ『ラプソディー de パパ ~ Rhapsody de PAPA』舞台セット(舞台美術:松本浩 ステージ・クラフト・サブ)
誠に恐れ入りますが 「写真や画像やロゴ等の転載は『』厳禁」ですので ご了承ください。
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Q:永見先生に、新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症の現況について伺います。
A:自分は感染症の専門家ではありませんし、お役に立つかどうか判りませんが、お聴きになりたいとおっしゃる方がおられるのでしたら、拙 つたな い愚見 ぐけん を申し上げましょう。
Q:永見先生にご意見を伺いたいという理由は、大きく分けて二つありました。いつも平常心を保ち、右顧左眄 うこさべん せず、どんな時でも泰然自若 たいぜんじじゃく として的確な決断を下される判断能力の高さを挙げられる方が多いですね。海外にも大勢の友人がいらっしゃり、お医者様のお知合も多くいらっしゃって、見識の広さを挙げる方も多くおられます。
A:自分も木石 ぼくせき ではありませんから、不安を感じることもあります。ですから、その辺 あた りは皆さんと変りません。それに、交友範囲が自分以上に広い方は、いくらでもいると思います。
Q:どんな心構えが重要でしょうか。
A:今の状況は、「有事であって平時ではない」ということを、しっかり認識する必要があると思っています。普段の平和な生活を送っている時には許されることが、このような非常事態には許されないことがあります。例えば、私権の制限は、平時では極めて限定されるべきですが、有事には私権の制限が望ましい場合すらあります。
Q:具体的に、有事とは、どんな場合を指して言うのでしょうか。
A:一般的には、非常事態が起こる事と定義できるでしょう。具体的には、戦争、天変地異 てんぺんちい 、疫病 えきびょう の大流行などです。
Q:今、何が一番大切だと思われますか。
A:とりあえず落着くことです。わからない事について、憶測や噂をもとに判断するのではなく、先ず、わからない事を「わからない事」として受入れ、信用できる情報を取捨選択 しゅしゃせんたく し、自分自身で解釈して判断することが大切でしょう。完璧な人間などいるはずもなく、特に、この状況下においては、揚足 あげあし 取りや重箱の隅をつつくような発言は慎もうと、自分は、肝に銘じています。わからない事を、わからない事として受入れる精神的体力が求められていると考えています。
Q:新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症について、どのようにお考えですか。
A:現時点でも、まだ実態が完全に把握し切れていません。有効だと正式に認められている治療法もありません。その前提を無視した議論には、大きな意味がないと思います。想像や憶測を交えての発言は極めて危険だとも言えます。
いま判っていることは、COVID-19は管理しにくいウイルスなのですが、人と人との物理的な距離を保つこと、所謂 いわゆる ソーシャル・ディスタンスィング social distancing によって意外にコントロールができるウイルスだということです。専門医が、密閉、密集、密接を避けよと、繰返し呼びかけているのは、それが最も大切と考えているからでしょう。
Q:今、我々は何をすべきでしょう。
A:先ず、一人一人が身の回りの事をキチンとすることではないでしょうか。例えば、細目 こまめ に手を洗うこと。換気を頻繁 ひんぱん に行うこと。人の手が触れるところを消毒することなどです。自分は、石鹸を使って30秒以上、丹念に手を洗うように心がけています。特に外から帰って来た時と、食べる時は、必ず手を洗います。それに、密閉、密集、密接を避け、不要不急の外出を控えることです。
自分は、薬や食料などの生活必需品を買いに出る以外、屋内で出来ることを中心に生活しています。今まで読めなかった本を読んだり、文章を書いたり、新しく楽譜をおこしたり、図面をひいたり、意外に充実した精神生活を送ることができます。
溜息 ためいき をネガティヴに捉える向きもありますが、血圧も心拍数も下るそうです。自分は、緊張や不安を覚えると先ず溜息を吐 つ いて、深呼吸するようにしています。そうすることによって、可成 かな り落着きます。
恐怖に怯えて体が震え、不安で涙が止まらないという方がおられます。不安に感じること自体は、何もおかしくなく、むしろ自然なのではないでしょうか。お互いの心に寄添い、手を携えて、この難局を乗り切るという雰囲気を醸成 じょうせい する。それを心がけたいと思います。
Q:我々がしてはならないことは何でしょう。
A:何度も口にして恐縮ですが、密閉、密集、密接を避けること。現状では、知らない間に感染している可能性が捨てきれず、他人ひとに うつす場合があるので、外出も控えるべきだと思います。それに、噂や流言飛語 りゅうげんひご に惑わされないことです。安易に結果論や比較論を振りかざして他人 ひと を非難しないこと。部分的、表面的に正しく見えることでも、色々な事情と立場がありますから、大局的、総合的、俯瞰的 ふかんてき に見て判断しなければなりません。木を見て森を見ずではいけませんし、逆に、森の外側ばかり見て木一本一本の危機に気が付かない場合があることにも留意すべきです。蟻の一穴天下の破れ、千丈の堤も蟻の一穴から、という例えもありますから、複眼的な思考が求められます。
Q:永見先生は、この状況でも泰然自若としておられますが、現状をどう受止めておられますか。
A:世界が集団ヒステリーに陥っているように見受けられます。自分自身を正当化するために他人を攻撃したり、都合のよい時に都合のよいところだけ弱者を装ったり、平時よりも一層そういった行為が目につきます。他人 ひと の所為 せい や 国の所為にしても、何もよい結果は得られないでしょう。「お互い様」の精神で、思い遣りを以て助け合う姿勢が大切だと思います。
言論の自由は、勝手に何を言っても構わないということではないような気がします。自分自身の自由を担保されたければ、他人 ひと の自由も担保しなければなりません。即ち、自由主義の法治国家においては、己 おのれ の自由を認めて欲しければ、他人 ひと の自由も認めなければならないのです。
自分は、テレビやSNSや新聞と縁遠い生活を送っているので、情報過多にならず、落着いていられるのかも知れません。
誰もが不安ですが、考えても結論が出ない事を悩んでみても仕方ないとも思っています。
実態が知りたいと思ったら、国の専門家会議による分析と提言が誰にでも閲覧できるようになっていますし、そのほかにも、意外に客観的なデータが数多く見られるので、自分は、それらを参考にしています。
スコトーマ scotoma は、ギリシャ語で盲点 σκολόμα の意味です。心理学的には、認知的盲点や心理的盲点を指して言うそうです。判り易く言えば、「その時に己が重要だと感じたものしか認識しない。」という現象です。言い換えれば、「自分自身にとって重要だと感じないものは遮断してしまう。」という脳の働きなのです。スコトーマはどんな人にも必ず存在しており、スコトーマ自体が悪い訳ではありません。しかし、現在のように世界が集団ヒステリーに陥っている場合には、自分に都合のよい意見に大きく傾くスコトーマから自由になることが極めて大切です。大局的、総合的、俯瞰的に判断すること、複眼的な思考や新たな視点で物事を見ること、それを実践すれば、スコトーマから、延 ひ いては集団ヒステリーからも自由になることができるのではないでしょうか。
Q:若い人達の行動を無責任だと批判する論調が多く見受けられますが。
A:若年層だけの問題ではないと思います。根拠なく、感染症にかかっても何とかなるだろうと、無責任な行動をとる人は、あらゆる年齢層に見られます。自分自身が感染して他人 ひと に うつす可能性が皆無だと言い切れない以上、行動を慎むのは、人間としての義務であり責任だと自分は思っています。
若い時は、自分もそうでしたが、経験が乏しくて無知であるにも拘らず、根拠のない自信をもって、勝手気ままな行動をするものです。若年層には、できるだけ自分自身で気付くように促すのが最善の策だと考えます。
カリフォルニアのパーティでウイルス感染について開き直った発言をした若者が、実名でSNSに謝罪の投稿をしたという記事を読みました。こういう若者も実際に存在するのです。過ちを改むるに憚 はばか ること勿 なか れ。勇気を示す行動には称賛を以て応えるべきなのではないでしょうか。中高年層にも、大人として模範となる行動を示していただきたいと切に願っています。
Q:新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症の脅威は、どんなところだと思われますか。
A:先ずは、急激に重症化して呼吸不全に陥る恐れがあることです。お亡くなりになった方には、心より謹んで哀悼の意を表します。それに、イギリス王室のチャールズ皇太子殿下、オペラ歌手のプラシド・ドミンゴ、俳優のトム・ハンクスの例を挙げるまでもなく、老若男女貧富の区別なく、誰にでも感染する可能性があることです。因みに、感染が判明してからのトム・ハンクスの行動は、称賛に値すると思います。
Q:新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症に恐怖を感じられますか。
A:今や世界で10万人を超える方が亡くなっていらっしゃるので、恐い病気ではないとは言えないでしょう。しかし、余りに感情的に捉えると、自ら不安を煽 あお ることにもなりかねません。新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症の実態が、おぼろげながら解って来ているので、データに目を通して現実を知ることも、有益だと思います。
国の専門家会議の分析では、国内で感染が確認された方のうち、重症か軽症かに関らず、約80%の方が他の方に感染させていません。感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっており、重症化した人も、約半数が回復しています。
しかし、だからと言って、安心して手を弛 ゆる めてはならないでしょう。医療現場では、関係者の方々の不眠不休の尽力によって、ぎりぎりで何とか現状が保たれているそうです。医療崩壊やオゥヴァシュート overshoot 爆発的患者急増を阻止するためにも、この状況で感染者を増やしてはならないという危機感と緊張感を共有すべきだと考えます。
Q:今後、何が最も懸念されると思われますか。
A:経済ですね。医学的な生命の危機、経済的な生命の危機、我々は両方の危機に晒 さら されていると思います。その次に来るのが犯罪。経済が落込むと必ず犯罪が増えます。詐欺は間違いなく増加するでしょうね。家庭内暴力、DVも増えるでしょう。コロナ離婚も冗談ではないと思います。社会の閉塞感 へいそくかん が尋常 じんじょう ではなく、鬱病や自殺者の急増も懸念されます。
Q:国の経済的な対応を、どのように評価されますか。
A:自分は経済の専門家ではありませんので、充分なデータを持合わせておらず、正確な評価ができません。
Q:一世帯30万円の支給について、どう思われますか。
A:妥当か否かは判断できませんが、この金額と現金支給自体にはインパクトがあります。全ての人を完全に満足させることは不可能ですし、我々が持ち得ないデータを国が持っているので、一人でも多くの人が救われる決定を下していただきたいと祈るばかりです。
Q:消費税減税について、どう思われますか。
A:基本的に減税に反対する人は少ないので、実行すれば喜ぶ人が多いでしょう。しかし、財源をどうするかという議論をしない訳には行きません。国は、目前の危機に対処しなければならないのは言うまでもありませんが、その後の事にも備えない訳には行かない。兵力の逐次投入は避けるべきというのは真実ですが、場合によっては、生兵法は大怪我の基という格言を証明することにもなりかねません。減税の効果が大きいか否かと言うと、限定的と述べる識者も少なくないし、軽々しく触れないという意見も多く、実際には難しいというところでしょうか。
Q:マスク2枚の配布については、どう思われますか。
A:マスク不足で購入できない方が多いと聞きますので、感謝している方も多いと想像されます。感染経路が特定できないケースが多くなって来ていますから、なるべく多くの方にマスクをしていただくことが悪いとは言えないでしょう。布か紙かの議論は、殆ど意味がないと思います。布製も、正しく扱い、きちんと消毒すれば効果が得られると専門家が言っています。
マスクに使うなら資金を他にという議論は、百人いれば百通りの考え方がありますから、お話としては面白いかもしれません。しかし、大きい声が正しい声とも限りません。揶揄やゆするような物言いに与 くみ することを、自分は避けたいと思っています。
Q:マスク自体について、どうお考えですか。
A:マスクは飛沫とエアロゾルを防ぐので感染拡大抑止には意味があり、感染を防ぐこと自体には余り効果がないと一般に言われますが、自分は、意外に感染防止にも効果があるのではないかと想像しています。マスクさえすれば感染症が防げるということでは決してありませんが、マスク着用に関る実験も論文も数少なく、未だ研究の余地があるのではと想像しています。
しかし、日本人のマスクさえしていれば安心と考える傾向が強すぎるのは事実でしょう。最も大切なのは、人と人との物理的な距離を保つこと、所謂 いわゆる ソーシャル・ディスタンスィング social distancing ではないでしょうか。余談になりますが、ソーシャル・ディスタンス social distance は、社会学において特定のグループや個人を排除するという意味にも使われるので、ソーシャル・ディスタンスィング social distancing と表現した方が、間違いがないと思います。
医療機関でさえマスクが不足している現状ですから、自分は、手元にマスクが数枚あるにはあるのですが、いざという時のために着用する機会を減らし、新たに買いにも行っていません。
Q:国の経済支援が不十分で遅すぎるという批判がありますが、どのようにお考えですか。
A:飲食業や観光業などで実際に倒産している企業もありますし、経済的に逼迫している方も大勢いらっしゃるので、経済支援は早ければ早い方が望ましい。目の前に危機を迎えた方が、対応が遅すぎると思われても無理はないと思います。どこで線を引くかというのが難しければ、範囲を広めに配っておいて、事態鎮静後に調整するというのも手かも知れません。
いずれにせよ、国のトップが、財政、金融、税制を総動員して思い切った措置を講じて行きたい、リーマン・ショックの時を超える対策を行うと宣言されたのですから、全ての国民が納得するのは不可能だとしても、やがて一定の効果が表れて来るのではないかと願っています。国のトップは、それが仕事だとは言え、完全にキャパシティを超えているという現状で、よく奮闘しておられるのではないでしょうか。
既に、国というシステムの許容範囲を超えた危機に突入している可能性も考えられるので、我慢を強いられるのは、止むを得ない事なのかも知れません。二の矢、三の矢を番 つが えるという国の方針を信じたいと思います。
アメリカの大統領だったジョンFケネディは、"My fellow Americans: ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. My fellow citizens of the world: ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man." つまり「我が同士なるアメリカ国民諸君、国が諸君のために何をなし得るかを問うのではなく、諸君が国に何をなし得るかを考えよう。我が同士なる世界中の市民諸君、アメリカが諸君のために何をするのかを問うのではなく、我々が共に人類の自由のために何をなし得るかを考えよう。」と訴えました。今まさに、全人類が、彼の精神を胸に刻んで前に進むべき時なのではないでしょうか。
Q:感染者の数について、どのようにお考えですか。
A:どの国も正確に把握できていないと思います。殊に、独裁的な全体主義国家によるデータの信憑性 しんぴょうせい は、誰にも保証できないと思っていた方がよさそうです。ですから、それを見て一喜一憂する必要はないと考えています。
Q:PCR検査について、どのようにお考えですか。
A:先ず、我々が思っているほど精度がよくないという問題があります。実際に、検査エラーで、感染者ではないのに陽性が出る偽陽性や、隔離が必要なのに陰性が出る偽陰性のケースが結構あるそうです。加えて、効率が悪く、医療機関の負担が大きく、むしろ医療崩壊を招きかねないというのが、医療従事者の多数の意見だと聴きます。ですから、無暗やたらに検査の数を増やす事に反対だという意見は、筋が通っていると言えるのではないでしょうか。検査の数を増やすこと自体を悪いとは言えませんが、検査数こそが新型コロナ・ウイルス対処法の決め手だという保証もどこにもありません。
有事ですから、色々な齟齬 そご が様々な場面で生じるのは事実でしょう。それはそれとして改善すべきですが、医療従事者の数も医療物資も不足しているギリギリの現状で、不安だからと言って検査数を無暗に増やす事には簡単に賛同できません。したくても出来ないのが実状ではないでしょうか。
国内で精度の高い検査器が開発されている最中ですし、検査体制を整えつつあるという話も耳にしますので、それに期待しています。
PCR検査については、現場で闘っている医療従事者の意見を尊重し、あくまでも医学的根拠に基づいて、科学的に処置されるべきだと考えています。
Q:永見先生は、新型コロナに関して、どの指標を最も重要視されていますか。
A:WHO の新型コロナ・ウイルスCOVID-19感染症による死亡者数です。このデータすらも完全とは言えませんが、感染者数の比較よりは相当マシだと思います。日本は意外に健闘していることが判ります。逆に、ここで手を弛めると欧米のようになりかねないという警鐘にもなっています。
Q:参考までに、WHO による新型コロナ・ウイルス感染症 死亡者数 世界比較(2020年4月12日現在)を見てみましょう。
イタリア:1万9千4百人超
アメリカ:1万8千5百人超
スペイン:1万6千3百人超
フランス:1万3千8百人超
イギリス:9千8百人超
イラン:4千3百人超
中国:3千3百人超
ベルギー:3千3百人超
ドイツ:2千6百人超
オランダ:2千6百人超
トルコ:1千1百人超
ブラジル:1千人超
スウェーデン:880人超
スイス:830人超
カナダ:600人超
ポルトガル:470人超
インドネシア:370人超
オーストリア:330人超
アイルランド:320人超
エクアドル:310人超
ルーマニア:280人超
アルジェリア:270人超
インド:270人超
デンマーク:260人超
フィリピン:240人超
メキシコ:230人超
韓国:210人超
ポーランド:200人超
ペルー:160人超
エジプト:140人超
ロシア:130人超
チェコ:120人超
ドミニカ:120人超
モロッコ:110人超
ハンガリー:90人超
ノルウェー:90人超
日本:90人超
Q:アメリカは、日本における感染者数が正確に判らない事を理由に、日本に滞在しているアメリカ人の帰国を促していると聞きましたが、どう思われますか。
A:自国民を守るのが国の役割という意味では、違和感は全くありません。しかし、PCR検査を数多く実施することが必ずしも好ましい結果を生まない事は先に述べた通りですし、サンプリング調査で傾向は掴めますし、どの国にせよ感染者数自体がアテになりませんし、日本の死亡者数が90人超であるのに対してアメリカの死亡者が2万人を突破しようとする勢いであることを考慮すると、日本における感染者数が正確に判らないから危険なので帰国せよという論理は、少し不思議な気もします。
Q:人種偏見に基づくヘイト・クライムが多発していると聞きますが。
A:大多数の良識ある人々は、抑制的に対処していると思います。世界全体が、このパンデミック以前からナショナリズムに傾きかけており、元々ヘイト・クライムが増加傾向にあったのは事実ですし、集団ヒステリーを起こしている現状を踏まえると、制御されている方だと考えられるのではないでしょうか。アジア人に対するヘイト・クライムに対しては、非アジア系の数多くの人々が強い非難を行っています。最近、ドイツ人のフランス人に対するヘイト・クライムが激化していますが、ドイツの外相が強く非難し、良識あるドイツ人はこれを支持していると思われます。こういうピリピリしている時ですから、ある程度の衝突が起こることは、各国にとって想定内でしょう。残念ながら皆無にはならないと思いますが、比較的、上手く迅速に処理できているのではないでしょうか。自分の周りに限って言えば、その類の話は全く聞きません。
Q:外国と比較して現状をどう思われますか。
A:どの国も、それぞれ政治体制や経済状況や歴史や人種が違い、従って法律も文化的背景も千差万別、医療や公衆衛生のレベルも異なり、自 おのず から感染症対策も違って来ます。それを表面的に単純に比較してみることには大きな意味を感じません。参考になるところは取入れればよいのですが、安直に比較して真似すればよいというものでもないと思います。
Q:政治家やマスコミの無責任な発言に対して非難の声が上がっていますが、どう思われますか。
A:今の状況は、「有事であって平時ではない」ことを、再び申し上げたいと思います。今まで経験したことのない危機に直面しているのですから、直ぐに正解が出せる訳がないと思っていた方がよいと、自分は構えています。
こういう危機的な事態になると、残念ながら集団ヒステリーに陥って、哀しいかな悪者捜しや生贄 いけにえ 捜しに奔 はし るのが人間の性 さが というものなのでしょうか。
全てを、他人 ひと の所為 せい 、 国の所為、政治家の所為、マスコミの所為、評論家の所為にしても、よい結果は何も得られません。「お互い様」の精神で、思い遣りを以て助け合う姿勢が大切だと思います。
非難するばかりではなく、興味を持って向き合ってみては如何でしょうか。政治家やマスコミが、この機をチャンスと捉えて政治的に立回るのは、ある意味、当然なのかも知れないですね。もちろん、大きな声が即ち正しき声とは言えません。「マスコミや評論家は、無責任だからこそ面白く大胆な意見が言える。」くらいに構えてみては如何でしょうか。我々が、政治家の特質やマスコミの特質をよく理解して、信用できる情報を取捨選択し、自分自身で解釈して判断する事こそが大切なのだと思います。
Q:日本は、なぜ罰則のある外出禁止令を出したり、ロック・ダウンしたり、しないのでしょうか。
A:日本は法治国家です。我国にそのような法制度が無いからです。罰則のある法律を制定するには、私権の制限など、難しい問題に関して議論を一から始めなければならず、今ここにある危機には間に合いません。ですから、国や地方の自治体も要請しかできず、国民一人一人の自覚に頼るしか無いのです。
政治の世界では、与党にせよ野党にせよ、相手が言えないことや答え難いことだと判っていて、駆引きしたり攻撃をしかけたりすることが常套手段ですから、それも念頭に入れて全体を考える必要があるかも知れませんね。
自分は、自由主義の法治国家である日本の一市民として、自分の自由を守るためにも他人 ひと の自由を守り、毅然たる態度で行動したいと考えています。
Q:生命か経済かという議論について、どう思われますか。
A:原則論として、平時ならば、命か金かと問われれば、躊躇なく命と答えます。しかし、今は、有事ですし、有事だからこそ、現実にしっかり向き合わねばなりません。
先ず、経済活動が、利益や金銭の問題だけではないことを指摘したいと思います。
命を守るために必要な医療物資は誰が作るのでしょう。今まさに必要とされるエクモ ECMO や人工呼吸器、検査機器、薬、マスクに至るまで、企業の活動です。それを運んで下さるのは誰でしょう。我々の知らないところで、知らない分野で、多くの良識ある人々が新型コロナと格闘して下さっていることに目を向けなくてはなりません。
もう一方で、明日にも食べられなくなるかも知れない方に、誰が面と向って経済活動を止めろと言えましょうか。
生命か経済かと選択を迫るのは、極論と言ってよいでしょう。各個人が出来る範囲で最善を尽くせばよいと自分は考えます。
意見交換や真摯な議論は必要ですが、こうした極論や結果論は、百害あって一利なし。耳を傾ける必要はないでしょう。
Q:永見先生に、心配なことは全くありませんか。
A:とんでもない。我々の仲間の事がとても気にかかっています。
大きなところでは、フィールドが少し異なりますが、カナダのモントリオールを拠点に活動するサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ Cirque du Soleil」が、既に全スタッフの95%に当たる4千6百人超を解雇し、破産申請も視野に入れていると報じられています。
ブロードウェイの劇場、メトロポリタン・オペラ、ミラノのスカラ座、パリのオペラ座をはじめ、世界の劇場が休業の憂き目に遭っているのです。しかし、こうした世界的な劇場は、パンデミックが収束すれば、何らか補償の受けられる可能性が高いのですが、我々舞台人の仲間は、殆どが個人事業主や零細事業者のようなものなので、こういう危機には非常に弱い立場なのです。
Q:最近は事務所に所属している若い舞台人が多いと聞きますので、生活は比較的安定しているのではありませんか。
A:実態はよく知りませんが、殆どは形だけだと聞いています。所属と言っても、事務所に食べさせて貰っているのは、本当に、ごく一握りの舞台人だけなのではないでしょうか。実際には、自分自身で仕事をとって来なければならないケースが殆どだと言われています。ですから、所属しているか否かで線を引くのではなく、実態に即した救済がなされる事を強く願っています。
Q:ザ・ディライトフル・カンパニーの所属も形式的ですか。
A:ウチの事務所は、カンパニーの所属を一般企業の雇用に近い形で位置付けているので、恵まれている方だと思います。少額ですが、月給もボーナスも支給されますので、形だけではありません。しかし、こんな状況が続けば、いつ所属を解消される人が出て来てもおかしくありません。ウチだけが無事でいるとは考え難い現状です。
Q:ザ・ディライトフル・カンパニー自体は大丈夫ですか。
A:この状況下で、何があっても絶対に大丈夫とは言い切れないと思います。運営は、事務方の人達がやって下さっているので詳細は判りませんが、今年一年は、何とか持堪えることが出来るのではないでしょうか。それ以降は我々の努力次第だと考えています。何としても継続させるべく、必死の努力を重ねるつもりです。
Q:これから、どうなるとお考えですか。
A:収束に向わなかった感染症はありません。重要なのは、収束まで手を弛 ゆる めない事です。同時に、人類が撲滅できた感染症は、天然痘だけと言われています。ですから、コロナ・ウイルスCOVID-19 が存在し続ける可能性が高いという現実を受入れなければならなくなるでしょう。これは長期戦です。どこかで感染防止策と社会生活再開の折合いをつけなければならないと考えますので、たいへん難しい選択を迫られると思います。我々のライフ・スタイルが劇的に変る可能性についても頭の片隅に留めておいた方がよいかも知れません。
しかし、世界中でワクチンの開発が始まっています。コロナ・ウイルスCOVID-19 感染症治療に効果があると推測される、エボラ出血熱抗ウイルス薬(ギリアド・サイエンシズのレムデシビル)、抗インフルエンザ・ウイルス薬ファビピラビル(富士フイルム富山化学のアビガン)、抗HIV薬ロピナビル/リトナビル配合剤(アッヴィのカレトラ)、喘息治療薬シクレソニド(帝人ファーマのオルベスコ)、皮膚エリテマトーデス/全身性エリテマトーデス治療薬ヒドロキシクロロキン(サノフィのプラニケル)、膵炎治療薬ナファモスタット(日医工のフサン)などの観察研究や臨床研究も既に開始されています。暗いニュースばかりではないのです。
東日本大震災における被災者のご苦労を偲べば、何のこれしきと思います。先の戦争で焦土と化した日本は、先人の懸命の努力で現在の平和と繁栄を築き上げました。
生きていれば何とかなる。いや、皆さんと共に生き抜いて、何とかしましょう。
明けぬ夜なし、止まぬ雨なし、冬来りなば春遠からじ。
永見隆幸
NAGAMI Takayuki
音楽家 著作家 舞台ディレクター
Musician Writer & Stage Director
20歳代はアメリカに住み、30歳代の殆どを欧米で過ごし、国際的な実力派アーティストとして活躍。クラシック、現代音楽、ジャズを中心に数々のオーケストラと共演する。
モーツァルトなどの独墺系オペラをはじめ、ビゼー『カルメン』ホセ、ヴェルディ『椿姫』アルフレード、プッチーニ『ラ・ボエーム』ロドルフォほか、オペラやオペレッタの主演多数。
ミュージカルでも、『ガイズ&ドールズ』ネイサン、『ラ・マンチャの男』ドン・キホーテ、『アニーよ銃をとれ オリジナル版』フランク、『キス・ミー・ケイト』フレッドなど数多くの主演を務め、『キャバレー』MCや『アニー』ウォーバックスなど、ユニークな役も演じている。
数多くのコンサートでソリストを務め、指揮者や指導者としても定評がある。
日本では、文化庁芸術祭主催公演やNHKクラシック・スタジオなどに出演。
音楽家のデューマス博士が「アメリカ大学時代から彼はずっとスターだった」と語るように、BHSア・カペラ世界チャンピオン "Crossroads" との共演やトリノ王立歌劇場への出演など、脚光を浴びている。
メリー・アーティスツ・カンパニーにおいて、全公演の芸術監督と、『ザ・ヴォイス Frank Sinatra』フランク・シナトラ役、『ラプソディーdeパパ』ジョージ・ガーシュウィン(ガーション)役、『ベリー・メリー・クリスマス』アーヴィング・バーリン役、『BOBBY』ボビー・ダーリン役ほか、多くの主役を務めた。
ジャズでは、スタンダードの歌唱が心に残ると言われ、ビッグ・バンドと渡り合う圧倒的な存在感、美しいヴェルヴェット・ヴォイス、抜群の表現力が、高い評価を得ている。
メリー・アーティスツ・ジャズ・オーケストラのリード・ヴォーカル。CD『My Blue Heaven』『Joyful Christmas』などをリリース。
東海地方においても活躍。名古屋市芸術創造センター開館30周年記念公演『Mr.ブロードウェイ』で主演のジョージ・M・コーハン役、名古屋市民芸術祭主催公演『マイ・ブルー・ヘヴン』では指揮者のみならず上等兵の英霊とジャズ・シンガーの二役を務め、絶賛された。毎週土曜日15:55放送のラジオ番組 FM AICHI 80.7「サウンド・ステップス」のレギュラー・ゲストとしても知られる。
天才肌で芸術家気質の行動人、論理的かつ哲学的な思惟の人、という二つの面を併せ持つと文芸評論家の清水信に評された。芸術評論家の馬場駿吉は、「永見隆幸は多面体、その核心には強い自由の希求がある。」と述べている。芸術家として様々な顔を持ちながら、話題性や知名度に関心を示さず、謎に包まれたアーティストして知られる。
著書に、『銀の光輝-しろがねのこうき』(NG出版)など。
現在、メリー・アーティスツ・カンパニー芸術監督、ザ・ディライトフル・カンパニー Artistic Director、東京二期会 会員、ほか。
永見隆幸&メリー・アーティスツ・カンパニーのミュージカル・コメディ『ラプソディー de パパ ~ Rhapsody de PAPA』で用いられた「月の台車」(舞台美術:松本浩 ステージ・クラフト・サブ)
アメリカ大学時代から永見隆幸の恩師である音楽家のデューマス博士夫妻
BHS ア・カペラ・カルテット世界チャンピオン CROSSROADS と共に歌う永見隆幸(中央)
トリノ王立歌劇場に出演の永見隆幸
トリノ王立歌劇場で開催されたレセプションにて トリノ市文化担当評議員 Francesca Leon フランチェスカ・レオンと握手を交す永見隆幸
『イッツ・ショウタイム! It's Showtime!』で、メリー・アーティスツ・ジャズ・オーケストラ MAJO と息の合ったところを聴かせる永見隆幸
メリー・アーティスツ・カンパニー『BOBBY ボビー』でボビー・ダーリンを歌い演じる永見隆幸(中央)
芸術創造センター開館30周年記念公演 メリー・アーティスツ・カンパニー『Mr.ブロードウェイ』より
Mr.ブロードウェイことジョージ М コーハンを歌い演じる永見隆幸(中央ボックス上)
永見隆幸&メリー・アーティスツ・カンパニー『ザ・ヴォイス ~ フランク・シナトラ The Voice ~ Frank Sinatra』より
フランク・シナトラ役の永見隆幸
メリー・アーティスツ・カンパニー『サラ ~ ベル・エポックを生きた華 Sarah Bernhardt』より
品位の高い風格ある公爵を歌い演じる永見隆幸(中央)
メリー・アーティスツ・ジャズ・オーケストラ MAJO「帝国ホテル東京ディナー・ショウ Imperial Hotel Tokyo Dinner Theater」より
メリー・アーティスツ・ジャズ・オーケストラ MAJO リード・ヴォーカル 永見隆幸(右)
名古屋市民芸術祭主催公演 メリー・アーティスツ・カンパニー『マイ・ブルー・ヘヴン My Blue Heavern』より
序曲を指揮する芸術監督の永見隆幸
ジャズ・シンガー役の永見隆幸(一人二役)
英霊役の永見隆幸(一人二役)
黒人霊歌『ゴーイング・ホーム Going Home』を歌う英霊役の永見隆幸
永見隆幸&メリー・アーティスツ・カンパニー『ベリー・メリー・クリスマス ~ Very Merry Christmas』より
アーヴィング・バーリン(永見隆幸)と孤児エンジェルの出会い
曲を創るアーヴィングと主演女優
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Photo:TES OSAKA
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This is Takayuki NAGAMI
メリー・アーティスツ・カンパニー
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永見隆幸 オフィシャル・ウェブサイト
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ザ・ディライトフル・カンパニー社長ご挨拶
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2020-04-13 02:20