永見隆幸 十三や 訪問 京都四条通 つげ櫛御調製処 御櫛師 櫛専門店 [永見隆幸 櫛]
音楽家、著作家、舞台ディレクターの永見隆幸先生が、京都の四条通にある櫛専門店の老舗 十三や を訪問されました。
十三や五代目店主の竹内伸一さん(右)と 永見隆幸先生(左)
明治八年=1875年創業の柘植櫛専門店で、奈良時代からの変らぬ製法を受継いでいるという老舗。京都で「つげの櫛」といえば先ず「十三や」の名が挙ると言われる 宮内庁 皇室 御用達 ごうようたし の名店です。
日本人の髪型に使われる柘植櫛は、主に30程の種類があります。しかし、大きさや歯の種類と数も異なるので、実際には、もっと沢山の種類が存在するそうです。
品揃えの点では、事実、京都四条通の「十三や」が間違いなく日本一充実していると、永見先生も太鼓判! 京都という土地柄故に、需要もあるのでしょうねとおっしゃってみえました。
黄楊という表記は、木材の世界において、台湾朝熊黄楊 たいわんあさまつげ を指すことが多いそうなので、この記事においては、柘植と書き表すことに致します。
十三や で扱う柘植櫛の原木には、鹿児島県指宿 いぶすき 産の柘植を使用しています。
指宿地方の気候は温暖で、育つ柘植が堅く粘り気があって、櫛作りにとても適しています。柘植の木には、肥料なども与えられ、大切に育てられるそうです。
櫛作りは、原木となる柘植の木を選ぶところから始まります。樹齢30年程の木を選定し、その櫛の原型になる形に製材します。それから、燻蒸 くんじょう し、10年程、乾燥させます。それによって、歪の少ない折れ難い櫛になるのです。そこから、充分に安定した物だけを櫛の形に加工します。充分に寝かせていないと、加工後に歯が曲る事もありますので、それを防ぐため、20年以上、物によっては30年以上、寝かせることもあるそうです。そこから、漸く櫛の形に加工されて行きます。
櫛の歯を弓鋸 ゆみのこ で切出す作業は歯挽 はび きと呼ばれます。職人の感覚が頼りになる繊細な作業です。歯の形が出来たら、次は、歯摺 はず り。木賊 とくさ や 椋 むく の葉で歯を磨き、棕櫚 しゅろ の葉で艶を出します。
一つ一つ丁寧に手間暇をかけ、心をこめて職人が拵えた十三やの柘植櫛は、伊勢神宮遷宮の折に奉納される「神宝」としても用いられています。
柘植櫛は髪通りが命。機械では櫛のきめ細かさを作れず、髪通りもよくすることが出来ないので、木目を見ながら、ひとつひとつ丁寧に仕上げているのだとか。十三やでは、奈良時代から変らない方法で、つまり、手作業で丹精込めて柘植櫛を作っているそうです。
柘植櫛は、使用するにつれて歯の部分が削られ、磨かれ、使う人の髪質に合った物になって行きます。天然の木を用いているので、静電気も起らず、枝毛にもなりません。また、手作業で作られているため、ひとつひとつが微妙に異なり、同じ物が二つとないのです。柘植は、丈夫な木なので、大切に扱えば、その方だけの櫛として、30年も使う事が出来るのだとか。
柘植櫛を使う事自体を「育てる」と表現する方がいるくらい、柘植櫛の歯は、使う程に丸みを帯び、髪によく馴染んで行くそうです。
十三や三代目店主の竹内親口吏 たけうち ちかしさんによる柘植櫛三作品をご紹介します。
本来、竹内親口吏さんの「口吏」は、漢字一字です。偏 へん が「口」、旁 つくり が「吏」で、「し」と読むそうです。珍しい漢字なので探す事が出来ませんでした。やむを得ず、このような表記に致しましたので、ご高承くださいませ。
流石に品位と風格の違いを感じさせる名手による名作
日本髪を結うために制作された十三やの櫛についても、永見先生は造詣が深くていらっしゃいますので、改めてお話を伺った上で、記事に纏めたいと思っています。是非お楽しみに!
十三やでは、一般的な櫛も扱っていらっしゃいます。
極上国産薩摩柘植櫛 五寸五分 梳櫛 ときぐし 荒歯(下)
極上国産薩摩柘植櫛 四寸 手付 紳士用(右上)
十三やという屋号の主な櫛専門店は、京都四条通の「十三や」、上野池之端の「十三や櫛店」、京都山科の「十三や工房」と、三軒あります。永見先生は、三軒ともよくご存知なので、その違いなども纏めて、別途、記事にしたいと考えています。乞う、ご期待!
日本広しと雖も、柘植の木を板にして、歯を入れ、櫛にまで仕上げるという、一貫生産を実際に行っている店は、京都四条通の「十三や」だけと言われています。
永見隆幸 上野池之端 十三や櫛店 訪問
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