稲荷宮 神苑 完成 伏見永幸稲荷 永見隆幸 企画 立案 プロデュース [永見隆幸先生information]
音楽家 著作家 舞台ディレクターの永見隆幸先生が 企画 立案 プロデュースされた 稲荷宮 神苑 いなりのみや しんえん が愈々 いよいよ 完成しました!
私有地に建てられた稲荷宮神苑なので一般の方に参拝していただけないのが残念です。
稲荷宮神苑入口の前に佇む永見先生
手水鉢 ちょうずばち
永見先生のご指定で水道の蛇口も竹型の凝ったもの
石の鳥居は、元々あったものを移動されたのだとか。
新しければよいという訳ではありませんから と 永見先生
ドームに覆われた神域
庵治石の石碑
庵治石 あじいし は、花崗岩のダイヤモンドと呼ばれ、その、きめ細やかな地肌、艶やかな光沢、石目の美しさを以て世界最高の品質と謳 うた われています。粒子の大きさで、細目 こまめ、中細目 ちゅうこまめ、中目 ちゅうめ などと分類されますが、この石碑は、細目の中でも最も高く評価される最上級材で、微小な黒雲母 くろうんも の数が多く、艶 つや やかに磨かれた石の面に、斑 ふ が浮くと表現される二重の絣模様 かすりもよう が見られます。永見先生が、どうしても石碑には最高級の庵治石を用いたいと仰 おっしゃ って高松の石材店から取寄せられたものだそうです。小口には、職人による「銀杏面取 ぎんなんめんとり」が施されています。
檜 ひのき 製 朱塗 しゅぬり 春日燈籠 かすがどうろう
両部鳥居の前に佇む永見先生
この両部鳥居は、朱塗 檜 ひのき 製 鳥居七基のうち、どうしても一番入口に近い鳥居を両部鳥居にしたいという永見先生のご意向があり、西口神具店さんが製作されたものです。
両部鳥居 りょうぶとりい とは、二本の本柱の前後に夫々 それぞれ 稚児柱 ちごばしら と呼ばれる低い控柱 ひかえばしら を設け、本柱と控柱の間に上下二本の控貫 ぬき で連結した鳥居。控柱の笠木の上に屋根がある。
両部とは、金胎両部、即ち、密教二大法門の金剛界と胎蔵界の両界を指す。両部鳥居は、神仏習合を示す名残と言われる。四脚鳥居、稚児柱鳥居、権現鳥居、枠指鳥居などの別名がある。
両部鳥居に掛けられた神額 しんがく
この神額は、伏見稲荷大社の楼門に掛けられている神額に倣って制作されました。伏見稲荷大社の楼門は、国の重要文化財に指定されています。
橘流書家で江戸文字の大家として知られる橘右之吉師匠、福善堂坂井看板店さん、指物益田さんをはじめ、名だたる江戸職人が大勢この神額制作に携 たずさわ ってくださいました。
永見隆幸先生(中央)
西口賢太郎さん(左:西口神具店 四代目宮師)
西口真太郎さん(右:西口神具店 三代目宮師御三男)
両部鳥居の稲荷宮側には古典的神紋「鍵紋」が、正面には神紋「抱稲紋 だきいねもん」が、配 あしら われています。これも永見先生のアイディア。
稲荷神の眷属である狐の像と石燈籠
よく勘違いされますが、稲荷宮 いなりのみや は狐を神様として祀 まつ っているのではありません。稲荷神 いなりのかみ に仕える「お使い」が白狐 びゃっこ で、目に見えない存在なのだとか。いずれにせよ、野山を駆回る狐とは関係なさそうです。
自然石を生かした石垣の上に国産石材で組まれた台座
稲荷宮の前に敷かれた拝石 おがみいし も国産一枚岩
稲荷宮の周りにのみ敷かれている白い玉砂利
陽が射して神々しく輝く檜の稲荷宮
永見隆幸先生(中央)
西口賢太郎さん(左:西口神具店 四代目宮師)
西口真太郎さん(右:西口神具店 三代目宮師御三男)
西口神具店さんは、稲荷宮、両部鳥居一基 稲荷鳥居六基 計七基、神苑を囲む稲荷玉垣、稲荷燈籠二基の 稲荷宮一式の製作と工事を受持ってくださいました。
西口直孝さん(右:西口神具店 三代目宮師)
西口賢太郎さん(中央:西口神具店 四代目宮師)
西口真太郎さん(右:西口神具店 三代目宮師御三男)
橘流書家で江戸文字の大家として知られる橘右之吉師匠が誂 あつら えてくださった稲荷幟 いなりのぼり
稲荷宮 神苑 いなりのみや しんえん を覆うドーム
稲荷宮 神苑 いなりのみや しんえん 外観
稲荷宮後方外観
設計段階では先端が鋭く尖っていましたが、永見先生のご意向により、アールをつけて柔らかいイメージになさったそうです。
鳥居と玉垣の間にある灯 あかりが 足元を仄 ほの かに照らして 可能になった夕方以降の参拝
永見先生に、この稲荷宮神苑について伺いました。
スタッフ:
全て永見先生がプロデュースなさったのですか。
永見先生:
全てではありません。自分が携わったのは、主に意匠の部分です。特に、金銭面には、一切手を触れていません。色々選定をしましたが、交渉には関りませんでした。しかし、形状と色彩の部分では、妥協していません。
スタッフ:
業者の選定は、先生がなさったのですか。
永見先生:
そうですね、意匠については全面的に任されていたので、最終的には自分が決めました。稲荷宮は西口神具店さん以外に無いと決めていましたし、当初から神額は橘右之吉師匠にお願いするつもりでしたし、神苑の石碑は庵治石と決めていましたので自然に高松の石材業者さんにという流れが出来ました。
スタッフ:
特に、ここは譲れないと思われたところは。
永見先生:
古い稲荷宮でしたから、趣はあるのですが、デコボコしていて危ないので、先ず、足元からバリアフリーに整えようと考えました。設計事務所と相談しながら今の形に集約して行きました。
スタッフ:
基本的なコンセプトはどのようなものでしたか。
永見先生:
温故知新。神苑の本来あるべき姿は崩さず、快適に稲荷宮に参拝出来る神域を創り出すことです。
スタッフ:
先生のアイディアで七基のうちの一基を両部鳥居にされたと伺いましたが。
永見先生:
初めから入口に近い鳥居を両部鳥居にしたいと思っていました。厳密な定義はさておき、神仏習合は排他的なものを好まない自分には面白い考え方だと感じられるのです。それに、あの形は、何よりも様子がよいと思います。
スタッフ:
先生は「石」にも一家言がおありになると伺いましたが、この稲荷宮神苑に使う石について特別なお考えがありましたか。
永見先生:
神苑の石碑を庵治石でという思いは強かったですね。稲荷宮の台座は、是非、国産の石材で組みたいと思っていました。足元の石などは、歩き易ければよいという考えで特に拘りませんでしたが、拝石 おがみいし は、設計事務所が、よい国産の一枚岩を探して来てくれました。
スタッフ:
神域を覆うドームは、先生のアイディアですか。
永見先生:
ドームで神域を覆いたいというのは自分の希望です。ただ、同時に、開放的な神苑にしたいという思いもありましたし、全てを覆い隠すのは違うと考えていました。しかし、自分は設計士ではないので、構造躯体数量や強度の計算など、何も知識を持合せていません。おおよその神域のイメージを設計事務所に伝えたら、伊勢神宮など神殿のイメージで引いてくれたという図面が提出されたのです。それが気に入ったので、これを基に、今の形に纏めて行きました。
スタッフ:
全てを新調なさらなかったのですね。
永見先生:
何でも新しければよいとは思いません。古い稲荷宮も、加工されていない檜で出来ており、かなり朽ちていましたので、換えざるを得ないという判断でした。そして、いざ古い稲荷宮を取外してみたら、自然石の石垣がアンバランスで台座を組んだ方がよいということになったのです。しかし、自然石の石垣を取去って、人工の台座を使おうとは全く思いませんでした。稲荷宮を包むように立つ美しい椿の垣根も、当初から、そのまま用いるつもりでした。古い手水鉢も、低すぎて使い難いものを、石を重ねて高さを調節し、使い易くしただけです。むしろ、新しくしなければ仕方のないものだけ新しくしたと言ってもよいでしょう。ただし、同じものを新しくしただけでは面白くありませんので、頭を捻って工夫した方が楽しいと考えたのです。
スタッフ:
色々な方のアイディアも採用されたのですか。
永見先生:
もちろん。拾えるものは全て拾いました。自分ひとりの力なんぞ高が知れています。
西口神具店さん、橘右之吉師匠、福善堂坂井看板店さん、指物益田さん、大川石材さん、天童木工さん、設計事務所さん、造園業者さん、建築業者さんほか、関ってくだすった皆さんの知恵と力を拝借して、この神苑が出来上ったのです。
こちらでは、元々千代保稲荷大神が祀られ、この度、伏見稲荷大社より御神璽勧請 おみたまかんじょう なさるそうです。
橘流書家で江戸文字の大家として知られる橘右之吉師匠の題字で福善堂坂井看板店さんの額彫りによる招木看板
永見隆幸先生は、本当に、何でも出来てしまう方だと思います。舞台でもそうですが、創ることに興味がおありで、鋭い感性と豊富な知見を以て、凄まじい集中力で圧倒的なものを制作なさる。類まれなる創造的才能を持つ、尊敬措く能わざる芸術家です。
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